よくみれば雑食

よくみれば雑食

雑食系男子が日々の出来事やお役立ち情報、気になる話題など幅広く書いてます

家庭教師と教え子のラブロマンスがあったりなかったりした話

f:id:ricaldent1990:20180919210449j:plain

 

過去に一度だけ家庭教師のバイトをしたことがある。

家庭教師と言えば、華の女子高生と密室で同じ時を過ごしていくうちに気付けばお互いに意識していて、ふとしたきっかけであんなことやこんなことになるというマンガでいうと30ページくらいのラブロマンス劇…。というのが私のなかの家庭教師像だったのだが、現実の家庭教師体験もこれまた何とも味わい深い体験だったので是非ご紹介したい。

 

クソみたいな大学生と委員長みたいな中学生

当時大学生だった私は授業もろくに出ず友人宅に足を運んではひたすら酒を飲み、スマブラをし、野郎数人で鍋をつつき、けいおん!を観ながらやっぱりムギちゃんが1番かわいいと熱弁しながらまた酒を飲むことを生きがいにしていた。自分で書いていてクズの権化みたいな生活をしていたのだが、卒業に必要な単位だけはしっかり取るという我ながらなかなかどうして容量の良さが当時の私にはあった。

しかし単位は取れても授業の内容なんて当然のことながらろくに頭に入っていない。その日学んだ内容は酒と共に流れ出ていく。というかその日の授業どころか過去の知識も放流されたダムのようにジャバジャバと音を立てて流れ出していた。

 

そんなある日、友人から「突然体調を崩してしまい家庭教師のヘルプを頼める人を探している」との連絡が入った。どうやら友人の目には私が家庭教師が務まる人材として映っているらしい。これは光栄なことだ。

そのうえ大学生というのは往々にして常に金欠に悩まされ続ける運命と共にあり、たった3時間で5000円もの報酬が手に入るとなればこれはもう断る理由がない。5000円もあれば鍋の後にアイスを買ってもいいし、チューハイではなくビールが飲める。とにかく5000円は偉大だ。

そんな浅はかな考えで二つ返事で快諾したものの、いざそのときになって胃がキリキリしだすと自身の安直さに心底嫌気がさした。あまりの緊張に股間のダムも決壊しそうだった。

しかしあれこれ考えていても引き受けてしまったものは仕方がない。覚悟を決めろ!いざ鎌倉!と生徒の待つ家を訪ねてみると、なんとも可愛らしい中学生くらいの女の子がお出迎えしてくれた。

そしてその子に導かれるまま女子中学生の部屋に入る。パステルカラーを基調としたなんともガーリーな部屋だ。心なしかフワッと甘い香りもする。

 

「いまお父さんもお母さんもいないからリラックスしていいよ」

 

初対面の女子中学生にそんなことを言われてリラックスできるはずもなく、妙にドギマギする大学生がそこにはいた。というか僕だった。(CV:神谷浩史)

なんだこのシチュエーションは。こんなの漫画でしか見たことがないし一歩間違えれば事案まったなしの綱渡りイベントじゃねぇか。友人はいつもこんな環境に身を置きつつ3時間で5000円もの報酬を得ていたのか。羨まけしからん。

わずか数分の間に非日常の波が一気に押し寄せ、頭がボーッとしてきたところでハッと我に返る。今ここにいる本質を忘れてはならない。邪な考えは縦縞に正さなければならない。そう、私は家庭教師をしに来たのだ。

しかしここで1つ重大なミスを犯していることに気付く。

 

あれ…?なにすればいいんだ…?

 

家庭教師もどき、ピンチ

これは由々しき事態である。

きっと友人も高熱にうなされておりそこまで頭が回らなかったのだろう。一方の私も5000円でもう頭がいっぱいになっており、最も重要な部分を聞いていなかった。これはマズい。何をすれば良いのかを全く知らぬままここまで来てしまった。

なんてことだ、こんな初歩かつ致命的なミスを犯しているとは…。

だがしかし焦っても仕方ない。落ち着いて、冷静にこの状況を分析してみよう。私はいま5000円に目がくらんで気付けば女子中学生の部屋に堂々と上がり込んでいる。そのうえ何をすればいいのか全く知らぬままドラマやアニメで見た家庭教師像のイメージだけを頼りに初対面の未成年の女の子の部屋に侵入している。そのうえ保護者は家にいない。密室に2人きりだ。なるほど。

 

これはマズい。

 

背中を冷や汗がツーっとつたう。脇汗はさながらナイアガラの滝。冷静に分析すれば分析するほどに事案まっしぐら。通報まったなし。お先真っ暗ゲームオーバー。

 

「先生?時間ですけど始めないんですか?」

 

そりゃ始めたい。始めたいけれど何から始めていいか分からないのだ。なんとかして体勢を立て直さなければ…。

そうだ!まずは自己紹介!自己紹介だ!お互い名前すら知らないのにコミュニケーションなんてまともに取れるわけないもんね!

 

「あっ、そのまえに自己紹介がまだだったよね。僕はカザマっていいます。いつも家庭教師に来ている彼が急病で来れなくなったので代理で来ました。」

 

「あーそういえば自己紹介してませんでしたね(笑) 私はリナ(仮名)っていいます。代わりの人が来るのは先生から聞いてます。カザマ先生よろしくお願いします。」

 

よし、自己紹介は無事に済んだぞ。リナちゃんもいい子そうで一安心だ。しかし問題の『何をすればいいか』の糸口がこれっぽっちも掴めていない。どうにか上手いこと聞き出せないだろうか…。

 

「今日は前回の続きですよね?」

 

ゼンカイノツヅキ…?

 

これはいよいよ詰んだ。前回なにをしたのかがサッパリ分からない。しかも続いてやがる。これはもう悠長に探りとか入れてる場合ではない。こうしているうちにもしっかりお給料は発生しているのだ。ここは素直に謝ろう。最悪5000円も諦めよう。

 

「あのー…、リナちゃん、申し訳ない!実はこちらの準備不足で今日なにをするのか把握できていなくて…。本当に申し訳ない!いますぐ友人に連絡して確認を…」

 

「あっ!ちょっと待ってください!」

 

ん?なにやらリナちゃんの様子がおかしい。

 

「実はその…先生に宿題を出されてたんですけど、そのことをすっかり忘れてて…。いつ謝ろうかってずっと考えてたんですけど…。」

 

「えーと…。それはつまり…?」

 

「先生に確認されると宿題を出せってことになるからその…。授業をやったことにしませんか?」

 

 

だ、大逆転ホームランだぁぁぁぁぁぁあ!!!!

 

 

なんでも聞けばリナちゃんはかなり成績優秀らしく現在教わっているところは学校で習った内容の復習の範囲らしいと。しかも教科はよりによって英語。This is a pen. I like Sushi.を最後に英語の授業の記憶が途絶えている私にとってこれほど喜ばしいことはない。というか私はなんて無謀なことをしようとしていたんだ。

英語力は中1の一学期レベルしかないことを正直に話すとリナちゃんの腹筋が16個に割れるんじゃないかというほど大笑いされたが、これがきっかけで心を開いてくれたようで今どきの中学生事情や、リナちゃん自身がハマっていることなどいろいろと教えてくれた。

そして幸いなことに当時の私はこれでもかというほど暇を持て余していたため、サブカルクソ野郎と化していたので特にジェネレーションギャップなどもなく会話することができた。

途中、急用で出かけていたお母さんが帰宅し、お茶菓子を持ってきてくれたためご挨拶を。その後も進捗を確認するのに何度かドアの向こうから声がかかるが、そのたびにリナちゃんが上手いことやってる風の雰囲気を出してくれたので大きな問題もなく無事に3時間の家庭教師もどきを勤め上げることができた。

 

「あー!面白かった!先生最高!ぜんぜん授業しない家庭教師!先生ウケる!」

 

ここには書けないが彼女も華の中学生という悩めるお年頃のため、リアルガチなアレやコレの相談なんかもあったりした。とまぁそんなこんなで家庭教師の終わりを迎えるころにはリナちゃんもすっかり打ち解けてくれていた。中学生と3時間も同じ目線で会話をしていると、まるで自分も中学生に戻ったみたいでとても新鮮だった。見た目は大人!頭脳は子供!迷探偵カザマ!

 

「先生!あっちの先生が熱出したらまた来てね!そしたら授業サボれるし!」

 

彼女のなかで私はすっかりボーナスキャラとして認識されているようだったが、それもまぁ悪くない。なにせ可愛い見た目のお年頃の女の子の話し相手をするだけで5000円ももらえるうえに美味しいお茶菓子と紅茶までついてくるのだから。こちらからしても願ってもないボーナスステージなのである。

 

「こちらこそまた機会があったらそのときはよろしくね。」

 

社交辞令でもなんでもなく、また機会があれば是非ともやらせてほしいとそう願う私なのであった。

 

見てるか、リナちゃん

後日談、というか今回のオチ。(CV:神谷浩史)

すっかり熱も引いて回復、いや快復した友人がいつにもましてうるさかったが、約束の報酬5000円をもらうときにこんなことを聞かれた。

 

「なぁ、なんかさ、リナちゃんがやたらと俺の次の休みはいつなのか聞いてくるんだけど、おまえなんか吹き込んだ?」

 

「いや?別に。何も問題なかったよ。」

 

「そっか、それならいいけどさ。ところでどうやって教材もなしに授業したんだ?」

 

「え?それはほら、あれだよ。俺ぜんぜん英語できないじゃん?だからバレないようにスマホで翻訳しながら宿題見てあげてさ…」

 

「は?英語?何言ってんの?俺が教えてるの数学だよ?」

 

「え…?」

 

拝啓

リナちゃん。お元気ですか。お変わりなくお過ごしでしょうか。

あれからもう7年経ちます。

あのときはよくも騙してくれたなこの小娘。悪ガキにはお仕置きが必要です。

今度もしどこかで会うことがあれば一緒に酒でも飲みましょう。

そしてお尻ぺんぺんさせてください。覚えておけよコノヤロー。

それではどうかお元気で。

敬具